2015年10月01日

ブログ企画【繋】第38回 テーマ「影響を受けた本」

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早いもので今日からもう10月、
街もすっかり秋っぽくなってきたようだ。
毎月1日恒例のブログ企画、
今月のお題は読書の秋にちなみ「影響を受けた本」とのこと。

このブログ企画で以前にも似たようなテーマで書いた事がある。
ちょうど2年前の2013年10月、
第14回テーマ「私を変えた一冊」というものだった。
その時はいろいろ悩んだ末に、少年時代に読んで多大なる影響を受けた
伝説のカルト野球漫画「アストロ球団」について書かせてもらった。

今回は私が学生時代に読みふけり、多いに感銘を受けた作家
「福永武彦」の諸作を取り上げ紹介したいと思う。

福永武彦.JPG

福永武彦(1918〜1979)は、主に昭和30年代〜40年代にかけて人気のあった作家である。
小学生の頃から漱石や芥川らの小説を読みふけり、
学生時代から自身でも創作活動を始め 雑誌に投稿 入選するなど
かなり早熟な文学青年であったようだ。
1941年、東京帝国大学仏文科を卒業、
当時において既に詩作、書評などをいくつかの雑誌に連載する。
しかし、この頃から体調を崩し入院 療養を繰り返すようになる。
(そのため召集を受けるも兵役にはついていない。)

戦後から中・短編の小説を多く手掛ける中、
結核での長期の療養所体験をもとにした長編小説「草の花」(1954)で高い評価を受ける。
その後も「夢見る少年の昼と夜」「廃市」「告別」等の中短編小説、
長編小説「忘却の河」「海市」「風のかたみ」など多くの作品を発表、
晩年の1972年、作家人生の集大成とも言える長編大作「死の島」で日本文学大賞を受賞するも、
この頃から体調の悪化著しくなり再び入退院を繰り返すようになる。
病床でも執筆活動を継続していたが、1979年 脳内出血の為61歳で死去する。

私が福永作品と出逢ったのは1984年、
大林宣彦監督による映画「廃市」を観たのがキッカケである。
残念ながら映画の出来としてはいまひとつな感であったが、
作品全体に流れる閉塞したような息苦しさが逆に強い印象を残し、
原作本を読んでみようと思ったのが最初であった。
結果、当時の自分の暗い性格にピッタリとはまってしまい、
その後 古本屋を廻っては少しづつ買い揃えていくこととなる。

福永武彦 書籍.JPG
(当時頑張って集めた福永武彦コレクション…現在ではかなり入手困難となってしまったようだ)

福永武彦の作品の傾向として、作家自身が生涯に渡り病弱であったゆえか、
作品全般に渡って「死」と「孤独」といったテーマが何度も繰り返されるのが大きな特徴と言えるだろう。
初期の代表作「草の花」における、純粋であるがゆえの絶望的な孤独…
過去に犯した罪の呪縛から逃れられず、心を閉ざしたまま ぼんやりとした「死」へのあこがれを持ち続ける「忘却の河」の主人公…
被爆による後遺症に怯えながら孤独の殻に閉じこもり愛を拒絶し続ける「死の島」の女流画家…
何かの作品をひとつでも読んでいただければ、作品全体に貫かれる徹底的な孤独感を理解していただけるだろう。
太宰のような私小説的なアプローチに比べ直接的では無いが、
作者自身の絶望的な孤独感と死への恐怖がどの作品にも影を落としているように思えてならない。
しかしながら、知らず知らず引き込まれてしまう文章力と構成の巧みさゆえか、
読後感は決して暗いものでは無く むしろ ある種の清々しさと「生への希望」すら感じられて来るから不思議なものだ。

もし興味を持たれた方がいたなら、とりあえず何か一冊 読んでいただければ嬉しく思う。
残念ながら現在では絶版となったものが多く いささか入手困難な作品も多数あるが、手始めとしては
初期の瑞々しい感性で綴られた短編集「夢見る少年の昼と夜」「廃市・飛ぶ男」
長編傑作の「草の花」「忘却の河」あたりがオススメである。

余談ではあるが、福永の作風はたいへん幅広く、小説の他にも詩作、書評、翻訳等で数多くの作品を残している。
主たる活動の小説の場においても純文学的現代小説にとどまらず
歴史物や推理小説、果てはSF小説まで手がける幅広さであった。
(何と あの有名な東宝の特撮怪獣映画「モスラ」の原作にまで名を連ねていたりするから驚きだ。)

発光妖精とモスラ.JPG

これまた余談であるが、福永は生涯で二度結婚しており、作家の池澤夏樹は福永の最初の結婚の時の子供である。
また その池澤の娘が現在声優として活躍中の池澤春菜で、つまりは福永の孫にあたるということも付け加えておこう。

池澤春菜.JPG

さてさて、ブログ企画【繋】は 毎月1日に、
参加メンバー全員が共通のテーマでブログを書くという企画です。
他の皆さんのブログも是非ご覧になってみてください。
また、この秋の11月14日(土)には
下井草のBILLY'S Bar GOLD STARにて( http://billysbar-goldstar.com)
ブログ企画参加メンバーでのチャリティ・ライブも企画されているとのこと。
残念ながら自分は仕事で参加出来ませんが、
興味のある方は是非ご参加ください。

ブログ企画【繋】参加メンバーのブログ

内田祥文のKeep Hope Alive♪
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posted by ありのぶやすし at 22:50| Comment(0) | ブログ企画「繋」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする